主に大学進学の夢を叶えるために、資金的な面で奨学金の存在は大きな助けとなります。
しかし、大学卒業後の返済について不安を感じている方も少なくないでしょう。
本記事では、奨学金の基礎知識を再認識した上で、奨学金返済の具体例や注意点などあなたの不安を解消し、将来の経済的な安定につながる情報をお届けします。
奨学金返済を恐れるのではなく、上手に管理して明るい未来への投資として活用する方法を一緒に探っていきましょう。
奨学金の基礎知識
世間的に奨学金と言われているものは日本学生支援機構(JASSO)の奨学金制度を指されていることがほとんどです。
日本学生支援機構の奨学金は『憲法、教育基本法に定める「教育の機会均等」の理念のもと、経済的理由で修学が困難な優れた学生等に学資の貸与及び給付を行っている制度』となります。
学生の経済的支援を目的とした重要な制度で、日本学生支援機構の「令和4年度 学生生活調査」によると、奨学金を受給している学生の割合は、大学(昼間部)で55.0%、短期大学(昼間部)で61.5%、大学院修士課程で51.0%、大学院博士課程で58.9%となっており、多くの学生が利用している制度となります。
奨学金の種類について
給付型奨学金
返済義務がない、いわゆる「もらえる奨学金」で、経済的な理由で進学が困難な学生が、
学業を諦めずに進学できるよう支援する制度で2020年4月から授業料減免も含まれるようになりました。
対象となる学生は主に「住民税非課税世帯」またはそれに準ずる世帯の学生が対象で、一定の学力基準・家計基準を満たす必要があります。
具体的には学力基準は「5段階評価で3.5以上」などがありますが、学ぶ意欲も重視されます。
支給区分は世帯年収などに応じて3段階(第1~第3区分)に分かれ、その区分によって支給額が変わります。
また給付型奨学金の受給者は、授業料や入学金の減免・免除も同時に受けられます。
貸与型奨学金
無利子の「第一種」と有利子の「第二種」があり、いずれも返済義務があります。
経済的理由で進学が困難な学生を幅広く支援する制度で、申込や返還の手続きは本人が行います。
貸与月額や採用基準は種類や進学先によって異なります。
第一種と第二種は併用も可能で、授業料や生活費支援のための特別増額貸与制度もあります。
第一種奨学金は成績基準が比較的厳しく、第二種奨学金は幅広い学生が利用できます。
支給金額について
給付型奨学金(返済不要)
支給額は「世帯収入区分」「学校種別(国公立・私立)」「通学形態(自宅・自宅外)」によって異なります。
住民税非課税世帯(第1区分)の支給例(月額)
区分 | 国公立(自宅) | 国公立(自宅外) | 私立(自宅) | 私立(自宅外) |
---|---|---|---|---|
大学・短大・専門学校 | 29,200円(33,300円) | 66,700円 | 38,300円(42,500円) | 75,800円 |
高等専門学校(4・5年) | 17,500円(25,800円) | 34,200円 | 26,700円(35,000円) | 43,300円 |
貸与型奨学金(返済必要)
第一種奨学金(無利子)は月額は進学先や通学形態によって選択可能。
区分 | 国公立(自宅) | 国公立(自宅外) | 私立(自宅) | 私立(自宅外) |
---|---|---|---|---|
大学 | 20,000円/30,000円/45,000円 | 20,000円/30,000円/40,000円/51,000円 | 20,000円/30,000円/40,000円/54,000円 | 20,000円/30,000円/40,000円/50,000円/64,000円 |
第二種奨学金(有利子)は月額20,000円~120,000円まで、10,000円単位で自由に選択可能。
私立大学の医・歯学課程は最大160,000円、薬・獣医学課程は最大140,000円まで増額可
入学時特別増額貸与奨学金は入学時のみ、100,000円~500,000円(有利子)を一度だけ追加で借りることができます。
申請方法・申請時期について
申請方法の種類は入学前の「予約採用」と入学後の「在学採用」があります。
在学中の学校や進学先の学校より申請書類の受け取り、指定された期日までに必要事項を記入した申請書類と添付書類(家計状況の証明書、本人確認書類など)を学校の窓口へ提出します。
申請方法の詳細
申請方法 | 主な手続き | 申込時期 | 申込窓口 |
---|---|---|---|
予約採用(進学前) | 高校等で書類提出→スカラネット入力→進学届提出 | 高校在学中(例:4~7月) | 高校等 |
在学採用(進学後) | 大学等で書類受領・提出→スカラネット入力→マイナンバー提出 | 大学等入学後(例:4~5月) | 大学・専門学校等 |
申請に関するポイントは下記になります。
①申込期間・期限:学校ごとに異なるため、必ず案内や募集要項を確認し、期限厳守で手続きします。
②必要書類:申込書、家計状況証明書、本人確認書類、マイナンバー関連書類など。
③申込は学生本人が行う:手続きや問い合わせも原則として学生本人が行います。
奨学金返済についての基本知識
ここでは卒業や貸与期間終了後に返済が始まる「貸与型奨学金」の返済について解説します。
具体的に奨学金の返済は貸与終了後、一定期間を過ぎてから毎月指定口座より自動引き落としで行われ、完済まで続きます。
返済期間は借入総額や返済方法によって異なり、一般的に15年から20年程度が目安となります。
返済方法には、毎月一定額を返す「月賦返還」や、年2回のボーナス時期に追加返済する「月賦・半年賦併用返還」などがあり、途中で一括返済(繰上返還)も可能です。
病気や失業などで返済が困難な場合は、返済猶予や減額返還などの救済制度も用意されています。
ここでは日本学生支援機構の奨学金の返済の重要なポイントである、利率固定方式と利率見直し方式の2つの算定方式について解説してみたいと思います。
利率の選択は将来の金利動向や個人の返済計画によって異なるため、慎重に検討する必要があります。
共通点
- 利率の上限は年3%に設定されています。利率固定方式と利率見直し方式の両方に適用されます。
- 奨学金申込時にいずれか一方を選択する必要があります。
- 貸与期間が終了する年度の一定時期まで、選択した方式を変更することができます。
利率固定方式
- 貸与終了時に決定した利率が返還完了まで適用されます。
- 将来の市場金利の変動に関わらず、利率は変わりません。
- 返済終了まで一定の利率が適用されるため、金利上昇リスクを避けたい場合に適しています。
利率見直し方式
- 貸与終了時に決定した利率を、おおむね5年ごとに見直します。
- 将来の市場金利の変動に伴い、利率も変動する可能性があります。
- 市場金利の変動に応じて利率が変わるため、金利低下の恩恵を受けられる可能性があります。
具体的な奨学金返済について
進学の夢を叶えるために利用した奨学金ですが、卒業後はいよいよ返済が始まります。
しかし、「どのくらいの期間で返すの?」「毎月の返済額は?」「もし返済が難しくなったらどうすればいい?」と不安や疑問を感じている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、日本学生支援機構(JASSO)の奨学金返済の基本から、返済方法や注意点、困ったときのサポート制度まで、知っておきたいポイントを分かりやすく解説します。
これから返済が始まる方も、すでに返済中の方も、ぜひ参考にしてください。
返済期間や返済開始について
日本学生支援機構の奨学金の返済開始時期や返済期間について、次のようになっています。
月々の返済額・返済期間は借りた金額や返済方式、通学形態によって異なりますので、詳細なシミュレーションや最新の返済例はJASSO公式サイトで確認してみて下さい。
https://simulation.sas.jasso.go.jp/simulation/
返済計画を立てる際は、これらの情報を考慮し、自身の経済状況に合わせて適切な方法を選択することがとても重要となります。
返済開始時期
- 奨学金の返済は、貸与が終了した月の翌月から数えて7ヶ月目に開始されます。
- 例えば、3月に大学を卒業した場合、その年の10月27日から返済が始まります。
- 中退した場合も同様で、最後に奨学金が振り込まれた月の翌月から7ヶ月目に返済が開始されます。
返済期間
- 返済期間は借りた奨学金の総額と選択した返還方式によって決まります。
- 一般的に、返済期間は15年から20年程度続きます。
返済額と期間の具体例
第一種奨学金(無利子)の場合
通学形態・学校種別 | 貸与月額 | 貸与期間 | 総貸与額 | 月々の返済額 | 返済年数 |
---|---|---|---|---|---|
国公立大学・自宅通学 | 45,000円 | 4年 | 2,160,000円 | 12,857円 | 14年 |
国公立大学・自宅外通学 | 51,000円 | 4年 | 2,448,000円 | 13,600円 | 15年 |
私立大学・自宅通学 | 54,000円 | 4年 | 2,592,000円 | 14,400円 | 15年 |
私立大学・自宅外通学 | 64,000円 | 4年 | 3,072,000円 | 14,222円 | 18年 |
国公立短大・自宅通学 | 45,000円 | 2年 | 1,080,000円 | 7,500円 | 12年 |
国公立短大・自宅外通学 | 51,000円 | 2年 | 1,224,000円 | 8,500円 | 12年 |
私立短大・自宅通学 | 54,000円 | 2年 | 1,296,000円 | 8,833円 | 12年 |
私立短大・自宅外通学 | 64,000円 | 2年 | 1,536,000円 | 9,230円 | 13年 |
第二種奨学金(有利子)の場合
貸与月額 | 貸与期間 | 総貸与額 | 月々の返済額 | 返済年数 |
---|---|---|---|---|
30,000円 | 4年 | 1,440,000円 | 11,293円 | 13年 |
50,000円 | 4年 | 2,400,000円 | 16,769円 | 15年 |
80,000円 | 4年 | 3,840,000円 | 21,531円 | 20年 |
100,000円 | 4年 | 4,800,000円 | 26,914円 | 20年 |
120,000円 | 4年 | 5,760,000円 | 32,297円 | 20 |
返済方法
- 毎月27日に指定された「リレー口座」から引き落とされます。
- 返済方法は「月賦返還」と「月賦・半年賦併用返還」の2種類があります。
注意点
- 返済開始時期は、大学や専門学校などの教育機関の種類に関わらず、最後の奨学金振込月を基準に計算されます。
- 在学中に貸与が終了した場合でも、「在学猶予」の手続きにより最長10年の猶予が適用される場合があります。
- 早期卒業や退学の場合、「在学猶予期間短縮願」を提出することで返済開始時期を前倒しできます。
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